つぶやき
世にも奇妙な定食屋
先日のこと。
お客様の工場で、朝から工事を行っていました。
電気配線やら、調整やらで、あっという間にお昼になり、
ご飯を食べようと、外に出ました。
サムの某S先生曰く、
「出張先では、食事の良し悪しで仕事のテンションが変わる」
といわれていることもあり、
出張先でのご飯といえば、間違いなく外食なので、
ipadを駆使して、店の吟味をするのが僕の仕事になっていました。
しかし、今回お客様の工場周辺にはまったく食事所がなかったのです。
はてさて、いったいどうしたものかな、と思っていると、
同行しているお客様Tさんがすたすたと歩いていきました。
僕とHAPPYさんは、
「むむ、なにかうまい店を知っているに違いない…」
と思って、後ろに続きました。
歩いて数分後、
ラーメン、と書かれたのぼりを発見し、
中華料理屋かなと思ったのですが、
近づくと、どうも様相が違いました。
居酒屋というか、スナックというか、
田舎の民家を中途半端に改装したような佇まいの店で、
入り口脇には、木の看板に手書きで、
「日替わり定食はじめました」
と書かれていました。
Tさんが迷うことなく入っていったので、
ほんとにここはいるの?
と躊躇していた自分は、
その店に入らざるをえなくなってしまいました。
店の中は薄く暗く、どこかの土産の人形やら、
田舎の家に置かれているような古めかしい小物が置いてあり、
カウンターの棚の上には焼酎ボトルが並んでいました。
非常に怪しい雰囲気が漂っていましたが、
ボトルには名前の書いてある札が掛かっていたので、
常連さんもいるのだろうと思い、
実は、おいしいのかもしれないぞ、という期待感が少し膨らんできました。
ただ、三つあるテーブルの一つが、おしぼりに占拠されていて、
店主であるおばさんが、
自分でおしぼりを巻いていたのを、見なかったことにすれば…ですが。
とりあえず僕らは注文をすることにしました。
僕はラーメンを頼もうとメニューを見たのですが…
「ラーメンが…ない…」
右から左まで、上から下まで、表も裏も、
手元のメニューだけでなく、壁に掛かっているメニューを見ても、
ない…
と僕が呆然としているときに、
HAPPYさんが、
「表に看板が出てたんで、日替わり定食頼むよ。
すいませーん。日替わり定食くださいー」
とHAPPYさんが店主に声をかけたのですが、
店主は苦いものを噛んだような、しぶーい顔をして、
「日替わり定食、ないよ」
え!?
だって、表に…
さすがに僕たちは顔を見合わせました。
「じゃあ、おすすめはなんですか?」
と聞くと、
店主は冷蔵庫を空け、中を調べてから、
「おすすめ、ないよ」
ないって、アンタ…
しょうがなく、僕はカツカレーを、HAPPYさんとTさんはオムライスを頼みました。
突然店主が店の外に出て行き、
数分後どこからか冷凍のカツを手に戻ってきたり、
次に入ってきた客が、日替わり定食を頼むに頼めなかったり、
といったことはありましたが、
無事に調理された料理が運ばれてきました。
オムライスを一口食べたHAPPYさんは、
なぜか悶絶し(塩コショウの塊が入っていたそうです…)、
その後も百面相をしながら、必死で食べていました。
それに比べ、Tさんは普通に完食。
チャーハンにケチャップをまぶして、
卵で包んだような味(HAPPYさん談)だったのに、平然と食べるなんて、
ここはやはりTさん行きつけの店なのか…と思いつつ店をでると、
Tさんが、
「いやー、まずかったね!」
と非常ににこやかに言いいました。
迷いなくこの店を選んだTさんも、はじめての入店でした。
僕もHAPPYさんもある意味ほっとしました…
「ところで、カレーはどんな味だったの?」
と二人に聞かれた、僕は答えました。
まんまボンカレーでした…
あと、福神漬けの代わりに紅しょうがが付け合せって…
お店選びは慎重に!
YKO